香住漁港の特産紅ズワイガニ「香住ガニ」
香住漁港の特産紅ズワイガニ「香住ガニ」
松葉ガニと香住ガニ
香住の特産品である紅ズワイガニ。関西では香住漁港だけで水揚げされ、「香住ガニ」とも呼ばれています。
紅ズワイガニは、松葉ガニ(ズワイガニ)とは全く別の種類のカニです。甲羅が茹でる前から赤っぽいことから、「紅」の名がついています。大きさや身のつまり方は松葉ガニと変わらず食べ応えがあり、鮮度のいい紅ズワイガニをちょうどよい塩加減で炊くと、松葉ガニに負けないくらいの旨味を味わうことができます。
松葉ガニが水深100~200mに生息しているのに対し、紅ズワイガニは水深800~1500mとより深い海に棲んでいます。松葉ガニは水揚げ後1週間ほどは活蟹として愉しむことができるのに対して、紅ズワイガニはより深海に生息しているために、水揚げした時に弱りやすく、新鮮なうちに食べたり、加工することが重要です。そのため、カニ漁が盛んな山陰地方の中でも水産加工業が発達している兵庫県のここ香住港と、鳥取の境港だけでしか水揚げされません。
香住の紅ズワイ漁
紅ズワイガニは、かご漁で漁獲されます。かごの中に餌のサバを入れて、紅ズワイガニが生息する海域の海底に沈めておき、紅ズワイガニをおびき寄せて獲る漁法です。紅ズワイガニが棲むのは水深800m~1500mの深海。底引き網漁を行うことができないため、深海や凸凹した海底でも操業ができるかご漁が用いられてきました。
資源保護のためかごの大きさや網目の大きさ、漁船ごとに使用できるかごの数などに制限が設けられています。漁獲してはいけないまだ小さなカニは、かごに入ったとしても穴から抜け出て逃げることができるようになっています。
漁に使うかごは、いくつもロープで繋がれて沖合の漁場に沈められています。紅ズワイガニの漁船は定期的にかごを上げ、蟹を出して、また餌を入れて海中に戻すという作業を繰り返します。
香住の紅ズワイガニの小型漁船は、港を出てからおよそ12時間ほどで戻ってきます。香住の紅ズワイ漁場は比較的陸から近くにあり、短い時間で戻ってくることができるのです。小型漁船は生け簀も小さく積み込める蟹の量にも限りがあるので、短い時間で操業を終え、港に帰ります。カネリョウ商店では、主にこの小型船が獲ってきた新鮮な紅ズワイガニを仕入れています。小型船は1回の操業で回れる漁場が限られているので、買い付けの際にも蟹の品質が安定しており、見極めがしやすいです。
一方で大型の漁船は、大きな生け簀を持っているので3日~4日間ほど連続して操業でき、船体が安定しているので小型船に比べて海が荒れていても漁に出られるという特徴があります。
紅ズワイ漁の歴史と「香住ガニ」のはじまり
記事のはじめでもお伝えした通り、紅ズワイガニが「香住ガニ」として香住漁港の特産品となっているのは、私たち水産加工業者の存在と深いかかわりがあります。
香住の紅ズワイガニ漁が始まったのは現社長の祖父の代、今から50~60年前。福井県から紅ズワイガニのかご漁が伝わってきたそうです。当時松葉ガニの漁獲量が少しずつ減ってきており、漁港として新しい特産品を模索していた中、同じように漁獲量が減っていたスルメイカ漁船を紅ズワイ漁船へと切り替える形で、紅ズワイ漁が広がっていきました。
紅ズワイガニは松葉ガニよりも深海に棲むために鮮度が落ちるのが早く、蟹を湯がいたり、加工ができる専門の水産加工業者がいる漁港でしか水揚げができません。そのために、山陰地方ではここ香住と、鳥取県の境港だけで獲られています。
今でこそ名が知られている紅ズワイガニですが、漁が始まったころは松葉ガニの代替品という位置づけが強く、お土産物屋で安価で売られたりするのが中心でした。松葉ガニとの価格差も今以上に開いていました。
そこでおよそ20年ほど前から、水産加工業者や観光協会、商工会議所などが中心となり、香住の紅ズワイガニを「香住ガニ」と呼んでブランド化する動きが始まりました。
香住の紅ズワイガニ漁の特徴は、小型船が多いこと。漁業の航海期間が短い分、新鮮なうちに蟹を水揚げすることができます。それは特に、深海性で鮮度が落ちやすい紅ズワイガニ漁にとっては重要なポイントになります。
香住は、水産加工業者もカネリョウ商店をはじめ規模が小さな業者が多いですが、その分蟹一匹一匹を大切に、きめ細やかに加工・提供することで紅ズワイガニを最も美味しい状態でお客様にお届けしています。小型漁船が獲ってくる新鮮な蟹と水産加工業者の技術があわさって、美味しい香住ガニが出来上がります。
新鮮な蟹をうまく炊いてこそ本領を発揮するのが、紅ズワイガニ。釜屋のカネリョウ商店としても、香住漁港だからこそ提供できる炊いた紅ズワイガニは、思い入れのある商品です。香住ガニの漁期は9月~5月のおよそ9か月間。是非一度、釜屋の炊いた紅ズワイガニをお試しください。