カート
0

香住の蟹漁業の今昔|紅ズワイガニ漁の始まりから資源保護の動きまで

香住の蟹漁業の今昔|紅ズワイガニ漁の始まりから資源保護の動きまで

カネリョウ商店の仕事は、質の高い蟹を仕入れ、美味しさを最大限引き出してお客様にお届けすること。水産資源がなくては始まらない仕事です。


天然の水産資源には限りがあります。様々な資源保護の取り組みがなされているものの、蟹や魚などの漁獲量は減少傾向。漁獲量を調整しながら、少ない資源が枯渇せず、毎年再生産されるように、計画的に利用していく必要があります。一方で、香住の漁業界も変わってきています。高齢化や若者の都市への流出で、年々蟹漁船の数が減っているのです。

今回はカネリョウ商店のある香住の水産資源と漁業の歴史と現状について、ご紹介したいと思います。

 

香住の紅ズワイガニと松葉蟹

今では「香住蟹」と呼ばれている、紅ズワイガニ漁が始まったのが今から50~60年前。香住漁港では古くから松葉蟹漁が行われてきましたが、松葉蟹の漁獲量が少しずつ減っていく中で、新しい香住産の海産物として紅ズワイガニ漁が始まりました。

松葉蟹と紅ズワイガニは全く別の種類の蟹です。松葉蟹は陸地に近い水深100m~200mに生息しており、底引き網で漁獲します。紅ズワイガニは水深800m~1500mの海域に生息するため、籠にサバなどの餌を入れておびき寄せる「カゴ漁」で獲られています。

使っている漁船が他の漁港と比べて小さいことが、香住の蟹漁業を特徴づけています。小さな漁船ではたくさんの蟹を生け簀に飼っておくことができないため、蟹が獲れたら新鮮なうちに港に戻り、競りに出します。小さな漁船を使っていることで、香住の市場にはより新鮮な蟹が供給されるのです。

また大型の船に比べて、小型船は陸に近い漁場を中心に蟹を獲ることになります。紅ズワイガニの生息域の中でも陸に近く比較的浅い海域では、身のつまりがよく旨味ののった、品質の高い蟹を獲ることができます。漁場によっても、蟹の味が変わってくるのです。

ベニズワイガニは鮮度の落ちが早いことが知られていますが、それは蟹に含まれている「旨味成分」が悪くなりやすいから。旨味成分が多い蟹ほど、新鮮なうちに早く炊いたほうがいい、ということになります。鮮度のいい紅ズワイガニをちょうどよい塩加減で炊くと、松葉蟹に負けないくらいの旨味を引き出すことができます。

陸に近い海で獲れた蟹を、新鮮なうちに炊ける香住は紅ズワイガニを獲って、調理するのに絶好の場所と言えます。釜屋で販売している「蟹の出汁で炊いた蟹」の美味しさは、香住だからこその味なのです。

松葉ガニと紅ズワイガニの漁法については、こちらの記事もご覧ください。

紅ズワイガニについては、詳しくはこちら

蟹の漁獲量と資源保護

香住漁港の蟹の資源量は、だんだんと減ってきています。近年は極端な減り方はしていませんが、かといって増えることもない、という状況です。紅ズワイガニ漁については産地として自主規制をして、漁期を1ヶ月縮めるなどの取り組みを行っています。

禁漁期間を定める以外にも、1か月ごとに漁船ごとの漁獲枠の制限があり、一定量以上を獲らないように取り決めをして操業しています

期間や甲羅のサイズの規制をして保護の取り組みをしているとはいえ、とり続ける限り水産資源が増えることはないというのが現状です。さらに冬の日本海は天気が荒れることが多く、漁に出られない期間が長くなって、獲りたくてもとれない年もあります。漁獲規制の取り組みをしている上に、荒天の影響で船が出せない日も多く、安定して獲り続けることが極めて難しいのが日本海の蟹漁業なのです。

このように、毎年私たち水産加工業者が仕入れることのできる蟹の量は限られています。カネリョウ商店は、天然資源を有効活用し長く利用していくためにも、貴重な蟹の価値を最大に高めてお客様にご提供するのが使命だと考えています。

 

減っていく蟹漁船 香住の漁業

蟹の漁獲量が減っていく中、香住の蟹漁船も数を減らしています。若者が船を継がずに都会に出てしまい、後継者が少ないのです。蟹が獲れなくなってきたことに加えて、近年では船や燃料の値段が上がり、経営が苦しくなって漁業を見切る人も出てきています。

今香住に残っている蟹の漁船は、底引き網漁の大型船が3隻、小型船が3隻。紅ズワイガニ籠漁の大型船が1隻、小型船が8隻。数少ない漁船で、香住の蟹漁業を支えています。

カネリョウ商店は水産加工業者なので、蟹を仕入れて調理し、お客様にお届けするのが役目です。私たちができることは、良い蟹をしっかりと見合った価格で仕入れ、最も美味しい状態でお客様にお届けすること。それを続けることで、蟹の価値を高め、漁船にも利益を還元したいと考えています。

また同時に、蟹の味を熟知しお客様の声を知る立場として、漁場ごとの蟹の品質について漁師にフィードバックすることもあります。ただ漁獲量を求めるのではなく、できるかぎり品質の高い蟹を選んで漁獲することが資源の保護にもつながるのです。

この記事では、カネリョウ商店と切っても切れない関係にある香住の漁業事情についてご紹介しました。カネリョウ商店が香住で蟹に携わって80年。これからも後世に渡って、水産資源が枯渇することなく、香住で蟹漁業が続けられ、今と同じようにお客様に蟹を楽しんでいただけるように、私たち自身ができることを続けたいと思います。

 →釜屋の「蟹の出汁で炊いた蟹」についてはこちら