蟹を選び、魅力を引き出す。釜屋の目利き
蟹を選び、魅力を引き出す。釜屋の目利き
釜屋の「蟹の出汁で炊いた蟹」は、蟹を一番おいしい状態でお客様にお届けするため、一匹一匹の大きさや身入りに合わせて塩加減や炊き時間を細かく調整して炊き上げています。蟹を一番美味しい状態で届けたいからこそ、最高の蟹を選ぶことに力を注いでいます。
釜屋のカネリョウ商店の目利き
カネリョウ商店は祖父母の代から続く、家族経営の水産加工会社です。大きな会社ではありませんが、少人数で買い付けから販売まで目を行き届かせているからこそできる、蟹の選び方があります。
一般的な規模の大きい水産加工会社では、蟹の買い付けと加工(捌く、茹でるなど)は別部門、別の担当者がやっていることが多いですが、カネリョウ商店では社長がすべてを見ています。社長が市場で蟹を買い付け、釜で蟹を炊きます。目の前の蟹をどうやって加工し、誰に届けるのかを頭の中に描きながら蟹を選んでいます。
良い蟹の選び方は言葉で表現しづらいものです。一見して大きくて身が詰まっているような重みがあっても、炊いてみるとスカスカだったり、味が良くない蟹もあります。目利きの技術は、蟹を選んで炊いてみることを繰り返し、身体で覚えていくしかありません。感覚知として代々引き継ぎ磨いてきた技が、今の時代になって他社が真似できない独自の強みになっているのではないでしょうか。
蟹を見るのは難しい
松葉蟹や香住蟹はかたい殻におおわれているので、外見からは中の様子がわかりません。蟹が新鮮かどうか、身が詰まっているかどうかは、外見と軽く持ち上げたときの感触で判断するしかありません。
蟹の身の味は、食べている餌の違いによって変わります。餌は漁場によって違うので、市場で蟹を見る時はまずどこの漁場で獲れたかを気にします。同じ香住でも、漁場によって蟹の生育環境が大きく異なり、味にも違いが出ます。
通常の競りでは、漁師が競りに出す前に蟹をランク分けします。カネリョウ商店ではそのままのランクだけで判断せず、一匹ずつ自分の目で確かめて選んでいます。漁師は蟹をとるプロ、私たちは蟹のうま味を最大限に引き出し、炊き上げるプロ。どちらが欠けても蟹をお客様に届けることはできませんが、競りの場は真剣勝負です。
早朝の競りが終わって加工場に戻ると、仕入れてきた蟹を一匹一匹手に取り仕分けます。
香住蟹(紅ズワイガニ)の場合、小さいもの・脚が取れてしまっているものは蟹味噌をとったり、むき身用として。脚がきれいに揃い、身のつまりや鮮度が最も良い蟹を丸々一匹の”姿”用とし、大きさごとに分けます。
松葉蟹(本ズワイガニ)は全て姿用として、身のつまりや大きさで分けます。
朝9時から10時ごろ、蟹を炊き始めます。(蟹の炊き方については、こちらの記事もご覧ください。)
無駄になる蟹はない
蟹は生き物なので、いろいろな大きさや身入りのものがいます。はじめから脚が取れているものもいます。獲ったからには、すべて「蟹を選ぶ」といっても、最上級の蟹だけを利用する訳ではありません。それぞれの蟹にもっとも適した使い方をすることで、蟹本来の価値を最大限に引き出すのが本当の目利きであると考えています。
蟹の漁場である日本海では、温暖化や餌が関係して、蟹の生育する環境に変化が出ています。そのため、例年水揚げ量が減少するだけでなく、蟹が小型化しています。山陰沖は広い漁場に恵まれているものの、漁期を制限しながら、枯渇しないように蟹を大切にしています。
釜屋のカネリョウ商店は、蟹の身はもちろん、殻や蟹味噌、出汁まで余すところなく使い切り、それぞれの蟹を一番美味しい形でお客様に御提供し続けていきます。